手揉みから機械揉みへ、今も変わらず息づく職人技

ストーリー

2018.01.21

急須に湯を注ぐと、花が開くようにふっくらと膨らむ日本茶葉。お湯が少しずつ鮮やかなグリーンへ変わっていく、まったりとした時間。「煎茶の製法ってどんなものだろう」と何気に思ったことはないだろうか。日本茶のルーツ、基本ともいわれる滋味深い「手揉み茶」。現在では、職人が手揉みし製茶する技法ではなく機械揉みが主流。しかしその現代的な製法のクオリティとはどうやって進化したのか、手摘み茶とは何か、その技術をどうやって取り入れ、機械揉みでもおいしい日本茶を楽しめるようになったかを知れば、一息ついたときの一杯のお茶が感慨深く、また更においしく感じられるはずだ。

手揉みが美味しい理由

手で揉まれた茶葉は針のように尖り、摘みたての茶葉を感じさせてくれるような鮮やかなディープグリーン。そしてその針のような茶葉は均等な長さと厚さを保ち、手揉み職人のこだわりをたっぷりと感じさせてくれる。見た目だけでも充分に味わえてしまうが、その味わいと香りはまさに格別の1杯となる。手摘み手法とは、江戸時代から伝わる伝統的な製茶法。一針三葉(最上部の芽の部分とそのすぐ下の柔らかい茶葉)のみを手摘みして使用している。また、手摘みともなると一度に採れる量が限られるため、品質や味の他に希少価値も高いとされている。摘み取られた茶葉はその後、「蒸し」「冷却(葉打ち)」「揉み」「乾燥」と大きく4つのプロセスで加工される。手揉みの良さは、(例外はあるが)それらのプロセスが手作業で行われ、そのこだわりと味わい深さ、針のように細く撚られた見事な茶葉からその技術力・完成度が伝わることだ。いまの機械での製法は手揉みをルーツとして、その動きをモデルとして機械化されている。そして、各加工場が競って技術力を磨き、機械でも手揉みのような茶葉を作り出したり、独自の美味しさを見出したりと今日まで発展を遂げてきたため、機械揉みにも独自のノウハウや美味しさが存在し、それもまた見事な職人技となっていることを強調したい。

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香りや基本の味わいは「蒸し」工程でほぼ決まるといっても過言ではない。たっぷりと時間をかけて蒸したものは「深蒸し」といわれ、通常の蒸し時間で蒸す茶葉は「中蒸し」(普通蒸し)、短い時間で蒸したものは「浅蒸し」と呼ばれている。日本茶専門店では全種揃っている場合が多いが、スーパーや量販店などで見かけるものは「深蒸し」や「中蒸し」がポピュラーな種類だろう。蒸したあと冷却し、揉みの工程に入る。手揉みでは浅蒸しが基本で、茶葉は大きく1枚、そのまま切れたり破けたりせずに残るよう揉むことを目指す。これは機械ではどうしても摘む段階でカットしてしまっているため再現できず、手揉みの大きなアドバンテージである。手揉みのような非常に浅い蒸し時間で、揉んだ茶葉が不揃いであれば、茶葉のランク的にも下がってしまうので、非常に神経をすり減らす工程である。道具は使わず、手でひたすらに茶を揉んでいくのだが、その工程は細分化される。

急須を温め、茶葉をひとさじ。お湯を注げばふんわり香る人の温もりとこだわり。急須に広がる茶葉は均等でふっくら。それが手揉み茶の良さだ。それほど手揉みの技術というのは繊細であり、茶葉のおいしさを最大に引き出してくれる手法だといえるだろう。

発祥そして発展した手揉み技法

「手揉み」の技法が初めて日本で認識されたのが1400年(広栄7年)頃。中国福建省より渡来した禅宗の僧、隠元禅師らが持ち込んだ中国茶の製法「釜炒り・回転下揉み」(釜に直接茶葉を入れ、攪拌しながら炒る手法)がルーツといわれている。隠元禅師の故郷である福建省は、静岡県のような山と海に囲まれた茶葉が育つには最適といわれている環境が整っており、知っての通りお茶の産地として日本でも有名な場所。中国の「手揉み」は、少しよじれさせてよったものと一般的に売られている茉莉花茶(ジャスミン茶)のように丸くまるまった形状と2種類が主である。現在の福建省では機械揉みもあるのだが、古くから茶畑を営んでいる農家は今でも手で摘み、釜炒り・回転下揉みで製茶を行っている。日本に話を戻すと、江戸時代に入った1738年(元文3年)、京都・宇治の「日本煎茶の祖」といわれる永谷宗円により製法が改良され、焙炉と呼ばれる器具の上で茶葉を揉みこみ、乾燥させる現在の製法の基「青製煎茶製法」が誕生。この技術の考案によって煎茶ブームが京都に到来し、高い評価と共に日本中へと広まっていった。人の手で揉みこみ、火力で乾かすこの技法は、時代が進むにつれて道具の発展と製茶職人の努力により、現在の製茶機械が製造され、高クオリティのものが主流となり、人の手に代わって活躍している。手揉みされた茶葉というのは、フレッシュな茶葉のテイストをそのまま楽しめることもあり非常に人気が高いが、すべて人の手で行うには人件費を含むコストがかかりすぎるため、現在手揉みを追求する人は少なく、希少となっている。そのため値段も通常の機械蒸しと比べると2倍から3倍と高く、日常的に楽しめる気軽なお茶ではないのは確かだ。

機械揉みでも伝わる作り手の心

手揉みの工程を製茶機械に置き換え、製造されるのが「機械揉み」。市場で見かける茶葉はほとんどがこの製法のものだ。機械化されたとはいえ、前述したとおり手揉みの技術がしっかりと組み込まれ、長年に渡って品質や技術の向上にたゆまない努力を重ねて来ているため、手揉みの持ち味だけでなく、自在に茶葉の良さを表現できるようになっている。

揉みの機械の前に立つ大原の生産家のお二人。煎茶堂のオープンにも駆けつけてくださいました。

「機械揉み」は手揉み茶の味に近づけるため、工程も細かくなっている。「蒸す」「冷却」「揉む」「乾燥」の4プロセスのうち、機械揉みは「蒸す」工程が3段階。粗揉(そじゅう)といわれる最初の「揉み」は、茶葉の水分を乾燥させないように揉み出していく。約1時間かかる作業で、茶葉に当たる熱風の温度や強さを微妙に変えながらランダムな回転を加え、茶葉の水分量を均等に調整していく重要な部分になる。次の揉捻(じゅうねん)は、葉の形を壊さないようにさらに茶葉の水分量をさらに調整、その後、中揉(ちゅうじゅう)、仕上げの精揉(せいじゅう)、乾燥と続くが、全工程を機械がすべてやるとはいえ細かい調節はもちろん人の手で行われる。精揉の段階では重りが軽すぎても、重すぎてもだめと非常にデリケートな作業が始まりから終わりまで続くので、機械揉みといっても、製茶の技術を熟知した人間が必ず工程に携わり、機械の調整や工程途中の茶葉の良し悪しの確認をノンストップでしているのだ。4月末〜5月中旬までの茶時期には、この工程を24時間稼働させることも行われており、茶業関係者は眠れないのである。江戸時代、日本茶の祖・永谷宗円によって開花し、ルーツとなった手揉み茶の味を機械で表現できるようになった昨今。それまでには長い年月とたくさんの人たちが携わり、研究・追求されてきただろう。そのため機械蒸しでも、昔と変わらない手揉みと同じような深い味わいを自宅で気軽に楽しめるのだ。

1杯のお茶に隠れる2,000年近くの歴史には、多くの人が携わり追求してきたことが伺える。長い歴史を通して進化し、手揉みから誰でも気軽にお茶を楽しめる「機械揉み」製茶法になった。その人たちのおかげで手揉みならではの味わいや温かみを欠かすことなく、ブレイクタイムや食後の一杯が至福の時間へと変わる。さりげなく飲むお茶には実は壮大なストーリーが隠れているのだと思うと、少しワクワクした気分にもなれるのがいい。お茶の味わいをしっかりと体感したとき、お茶に対する見方も変わり、深く心地よい味わいへと変わっていくことは間違いない。

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